今年27歳になった私が聴いてもこれだけゾクゾクくるわけだから、10年前に聴いていたら影響されまくっちゃってたまらないだろうな…というのが本作を聴いた私の正直な感想でございました。お恥ずかしい話、ちゃんと聴いたのは初めてだったんですが、Hip-Hopクラシックを打ちたてようという勇ましい、ある意味ヤケクソ気味な気概に満ちている点に敬意を表し、久々にレビューの一本でも書かねばなるまいと思いました。Maroon5の新譜の駄目さに比べると実に胸がすっといたします。まあホワイト・ストライプスはもっとダメダメでしたけどね。
私が一番彼らのことを凄いと思う点は、彼らはほとんど飛び道具だけというか、飛車角だけで将棋をやってるようなところを感じさせるんですが、それが天然なのか計算なのかいまいち判断しかねるという点なのです。彼らのやってる音楽の一貫性の無さを攻め立てるっていうのはお門違いもいいところでありそうだ、ってことだけはわかってきたのですが…。例えばアレステッド・ディヴェロップメント(激古)も最近結構聴いてたんですが、こっちのほうが断然どうしてこういう音楽が出てきたのか、というのがわかりやすいし、非西欧の音楽的要素を溶け込ませるのには長けてるので、よい意味でも悪い意味でも「安心できる」音楽であると思います。しかし現代において面白いのは断然ブラック・アイド・ピーズなんですよね…。アレステッド・ディヴェロップメントは普通にイイ(←頭悪そう)んですけど、構造が透けちゃいそうなところがあります。ブラック・アイド・ピーズのほうがもっとティンバランド的っていうか、何が飛び出てくるかわからないブラックボックス的っていうか、おもちゃ箱感があるというか…。本質のところがブラックボックスである限り表現は鈍らないってこと、なのかなあ?(そう考えるとティンバランドはやっぱり偉大です)そこが本気なのかわからないのが彼らの面白いところであり、同時に不気味なところでもあります。大ヒットした「ヘイ・ママ」とかの抑制されたカッコよさになんか触れちゃうとますますわからなくなってきます。あんまり飽きないし…。
何はともあれこのアルバムの1-5曲目までの恐るべき流れはマッシブ「メザニーン」の1-3曲目までを彷彿とさせる、明らかに時代を画する展開である、と私は思います。
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この人たちがいなけりゃパブロックは無かった、ということはウィル・バーチ著「パブロック革命」を読んでいただければ一目瞭然のエッグス・オーバー・イージーです。全然泥臭くならない、かといって西海岸的爽やかさともちょっと違う…これは一体なんだろう?ザ・バンドとも、かといってザ・バーズとも違いますが、そのどちらもついぞ持てなかった絶妙なこじんまりした軽み(安くて美味い!)があり、今年聴いた洋楽ロックの中では今のところベストの作品。パブロック勢のアルバムと比べると曲調もバラエティがあり、名曲も多し。つい何度もリピートしてしまいます。こういう音楽をやってみたいなあ。
エドワード・ホッパーの絵に温かみをもたせたようなジャケットも彼らの音楽を端的に表しておりますね。
続きを読む "EGGS OVER EASY "GOOD'N CHEAP"" »
ちょっと前に取り上げたブロッサム・ディアリーもたいへん小粋な音楽でありましたが、このランバート,ヘンドリックス&ロスはそれに勝るとも劣らないとびきり粋なヴォーカリーズ・トリオであります。軽妙洒脱、しかし高度にテクニカルなことをしている…にも関わらず聴き終わると清涼感が残る(「ロンバケ」風に言うと「心にブリーズが吹き抜ける」)といった具合。それにしてもつまらない曲が無い!全曲何かしら聴きどころがあります。綺麗な正三角形を想起させる、これは一つの工芸品。
続きを読む "Lambert, Hendricks & Ross "The Hottest New Group in Jazz"" »
昔"Give Him the Ooh La La"ってアルバムを聴いたときには特別何の感慨も抱かなかったブロッサム・ディアリーですが、これを聴いたら凄くいいなあと思ったのでレコメンしときます。このアルバムはどの曲も非常に楽しいですけど、やはり私の敬愛するジョージィ・フェイムを歌った「スウィート・ジョージィ・フェイム」がいいですね。ジョージィ・フェイムの歌声とオルガンがどのようにロンドンの街をスウィングさせるのか?を描いた名曲で、ちょっと涙出そうです。ダスティ・スプリングフィールドについての曲もいいなあ…。いわゆる自称「コケティッシュな」魅力で売ってる人たちが裸足で逃げ出すほどの、天然、かつ一点もののコケティッシュさが確かに存在します。
続きを読む "Blossom Dearie "Blossam Dearie for Cafe Apres-midi"" »
さっそくその後件のホワイトシチュー牛丼を食べてきたyojiです。こんばんは!これは…激しくお勧めできません!多くは語るまい…。
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ライカ銀座店で行われているウィリアム・クラクストンの写真展に行ってきました。私はほんとに出不精なんですが、さすがにウィリアム・クラクストンの写真展と聞けば行かないわけには行くまい。彼の略歴はこちらを参照していただくとして、私が彼の名前を最初に目にしたのは言うまでもなくチェット・ベイカーの一連のあの印象的なポートレイトでした。時に静謐に、時に優しく広がる光の粒子の美しさ!うーむいいなあ…と、ほとんど人がいないのをいいことに私はじっくり堪能してしまいました。たまにぽつぽつ人は来るんだけど、みんな買い物のついでという感じで、写真を目当てに来てる人はあまりいませんでした。おかげでちゃんと買うと三万円ぐらいする彼の写真集「JAZZLIFE」もじっくり見れました。ベイカーの写真だけじゃなく、ビル・エヴァンスとかスタン・ゲッツとかアート・ペッパーとかの写真などもかかってました。私は写真については全くの門外漢なんですが、最初は特に気にならないんだけどじっくり見てみるとエリントンの写真なんてかなりユニークな構図になってると思います。私が行ったときにはエヴァンスの「ポートレイト・イン・ジャズ」とチェット・ベイカーの音楽が流れてて、落ち着かない銀座の街でしばし幸福な時間を過ごせました。ライカ銀座店に入るときはさすがに緊張しましたけどw
3/2には彼の伝記映画「JAZZ SEEN/カメラが聴いたジャズ」もやるようなので、こちらも観に行く予定です。
しかし休日にガラガラの都心をカブで移動してると、えもいわれぬ贅沢な気分になりますね。死ぬほど安上がりな贅沢ですが。
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