私が大学生であった頃、どういう文脈であったか覚えてないけど、卒業論文の担当の教授が授業中に「最近塚本功という男にハマっている」みたいなことを雑談の中でぼそっと言いました。私はその教授の授業はかなり熱心に聴いていたので(内容も興味あったし、まさか卒論担当の先生の前で寝てるわけにはいくまい)、「塚本功か、家に帰ったら調べてみよう」と思ってノートの隅にメモっておきました。家に帰って検索かけてみると、小島麻由美のバックで演奏してたり、以前書いたことのあるスライ・マングース(現在はスチャダラ+ロボ宙と合体してThe Hello Worksになっております)の一員でもあるということがわかり、実は様々なところで彼の演奏は(特に小島麻由美は好きであったので)既に耳にしていたわけです。そこで今回は彼のオリジナル・ソロアルバム二枚をご紹介。
まずは彼のトレードマークともいうべきGibson ES-175の名前が冠されたソロ第一作「Electric Spanish 175」。私はこちらが今のところ一番気に入ってます。アンプ直結のフルアコ一発録りという、モロに演奏者の力量が出てしまうフォーマットの中で、西部劇の決闘シーンのような節くれだった素っ裸の演奏が淡々と綴られていきます。まず音色の決め方からして絶妙。もうちょいでハウりそうになるところをなんとかねじ伏せたようなフルアコの残響音が、かさかさしてひび割れていそうな空間へと溶け込んでいきます。ジャズでもブルースでもない、間を生かした、武士の居合い斬りのような音楽。小島麻由美嬢も「ニーナ」でヴォーカルとして参加。
お次は昨年発表された2nd「ストンピン」。これはジャケットがまず最高ですね。髪を短くしてぴたっと撫でつけ、なんとなくザズー風というか、ジャンゴ・ラインハルトっぽい雰囲気へ変貌し、演奏もG:塚本功、Ds:ASA-CHANG、B:長山雄治というトリオとなってます。塚本&ASA-CHANGというコンビは小島麻由美を陰で支える鉄壁の布陣。こちらは短い尺で畳み掛けるようにアップテンポの曲が並んでおりますが、このアルバムにおいても塚本氏のES-175は快調にリフを刻んでおります。決して速引きってわけではないんですが、リフの一つ一つに色気があっていいですね。カブに乗ったりドライブしてたりするときはこっちのほうがいいなあ。
しかし…塚本氏はかっこいいなあ。憧れちゃうなあ。こんな大人になりたい。スライ・マングースについて私は「やさぐれた大人たちというのは、他人を傷つけるぐらいなら寧ろ自傷に走るであろう、と思わせる点が共通している」ということを書いた覚えがあるんですが、これらのアルバムを聴いて私はそれを再確認・再認識することになりました。
卒論担当の教授です。岩田くんだよね? たまたま我がギターの師・塚本氏のことを検索してたら、「およよ?」という記事に行き当たり、読めば読むほど、岩田くんだろうなぁと。(岩田くんで良かったんだよね?) 私は今年度、サバティカルで、単身、Yale大学のあるNew Havenで過ごしています。
塚本氏へのコメント、どれも同意します。彼のホームページを見て、是非、下北沢leteでのソロライブに行ってみてください。はまりますよ。2枚目のCD発売記念のライブは、トリオでやったけど、これは2時間あまり、鳥肌がたちっぱなしでした。彼は完全にライブの男です。昨年度は、あまりに惚れ込み、ついに授業に呼んで、演奏までしてもらいました。
気が向いたら、返事ください。じゃまた。
投稿情報: Hachiya Mizutani | 2008/07/13 03:11
どうも、ご無沙汰いたしております!いやー、ネットは怖いですね(笑)。恥ずかしくて汗が出てきます。思いっきり本名晒されてるし(笑)
今先生は日本にいないんですね。今度研究室お邪魔しようかと思っていたのですが…。塚本氏を授業に呼んだという件ですが、なぜ我々のときやってくれなかったんだ!という気持でいっぱいであります(笑)。先生のおかげで音楽地図がかなり広がったので、本当に感謝いたしております。ある意味では(出来の悪い)卒論を担当していただいたということ以上に。勿論西海岸ジャズも引き続き沢山聴いております。
なかなか平日夜休みが取れない仕事なのでライブ観に行くことが出来ないのですが、運が良かったら是非観に行きたいと思っております。会ったらなんかオゴってください(笑)
日本帰ってきたら是非飲みに行きましょう。では。
投稿情報: yoji | 2008/07/13 13:57