とにかく、Apple Musicによって音楽の聴き方、音楽に向かう姿勢が一変した一年間でした。自分としては感覚的に「入場料980円でタワーレコード渋谷店で万引きし放題」を許されたような感覚でした。そういうとき一体自分はどうなってしまうのか?というのはなかなか興味深いものでした。アルバム単位で言えば、新しく200〜300枚のアルバムを聴くことができました。
順不同で、今年沢山聴いたアルバムを挙げてみたいと思います。
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NEW ZION TRIO "Fight Against Babylon"
いきなりですが、これが2015年聴いた音楽の最高傑作だったかと。DUBの深〜い音響の上に静かなピアノトリオの演奏が繰り広げられ、芯のところは太いのに聴いた後は清涼感が残ります。特に夏、プールから上がった後に聴いたりすると最高でした。フェンダーローズがフィーチャーされてる"HEAR I JAR"がほんとに良い。
Charlie Haden & Kenny Barron "Night and The City"
「夜と都市」。それにしても素晴らしいタイトルです。単純なのに想像力をかきたてます。ライブ盤ですが、ほとんど観客の存在は感じません(たまに拍手が起こったりグラスの触れ合う音はしますが)。長尺の曲が多く、最初は軽く聴き流していられるのですが、曲が進むにつれ垂直に深みにハマっていきます。チャーリー・ヘイデンの一歩引いた演奏が素晴らしい。今年はチャーリーヘイデン関連作を沢山聴いていました。
Charlie Haden & Chris Anderson "None But The Only Heart"
こちらもチャーリー・ヘイデン参加作。どこで演奏しているのか知りませんが、盲目のピアニスト、クリス・アンダーソンとのたおやかな演奏は、まるで薄く埃の舞う教会の中に差し込む光の粒子のような響き。大きく分ければジャズなんですが、ニーナ・シモンとかローランド・カークみたいな、ジャンルを感じない(というか、クラシック音楽の室内楽のように感じる)懐の深い音楽です。敬虔さとか、祈りみたいな。
Gladstone Anderson & Moodies All Stars "It May Sound Silly"
スカ〜ロックステディのインストなのですが、珍しく管弦楽入り(しかもちょっとモータウン的にソウルフルなのがまたいい)で楽しいアルバムです。"Feel Like Dancing"という曲が素晴らしく、ずっと聴いてます。ピアノもラウンジ的ですが、ギリギリのところで持ちこたえてる感じ。こういう一歩間違えるとただのスーパーマーケットのBGMという曲がどうしても好きです。
Patricia Lobato & Renato Motha "Dois em Pessoa"
フェルナンド・ペソアという詩人の詩に音楽をつけた二枚組現代ボサノヴァ大作。といっても音楽的に窮屈なところが全くなく、モダンで瑞々しい響き。豪華さはありませんが、凛とした清潔な美しさがあります。
Ann Burton "Blue Burton"
こういうアルバムって普通にやっちゃうとただ情念の塊のブルージーな音楽になって音楽的につまらないと思うのですが(特に歌詞がよくわからない場合)、ルイス・ヴァン・ダイクのいい意味で「軽く」流麗な演奏が音楽的な重層性を与えていると思います。万人にお勧めの傑作。
Bill Perkins "Just Friends"
これはもう一曲目の「ジャスト・フレンズ」から最高に爽やかな西海岸ジャズ。軽快で、かつ聴きごたえがあり、何度も聴けます。アート・ペッパーの演奏も素晴らしい。やはり真夏によく聴いてました。「オン・ステージ」も素晴らしいアルバムです。
Walter Wanderer "Rain Forest"
今年は今まであんまり聴いたことのなかったワルター・ワンダレイ関連作を沢山聴いていました。このチープでかつ涼しげなハモンドオルガンの音は中毒性があります。特にフルートの音と絡むと個人的に最高です。ラウンジとかモンドとかを超越したひたすらセンスいい演奏。「熱帯雨林」というタイトルとモンド感しかないジャケットも100点。
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そういえば小沢健二の「超ライフ」も観ましたが、何はともあれシュガーベイブ「ダウンタウン」をやっていたことに驚き。音楽映画ではブライアン・ウィルソンの伝記映画「ラブ&マーシー」と、ベルセバのスチュアート・マードックが監督した「ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール」も観ました。どちらも素晴らしかったです。あとは和田ラヂヲの「聴くラヂヲ」をPodcastで結構聴いてました。
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