twitterのタイムラインで興味を持ちました。彼女のファーストアルバムは以前聴いたことがあったのですが、YouTubeの動画などで観られるような、戦慄を覚えるほどの迷いの無さというのは打ち消されていて、なんかロックっぽいアレンジでになっているし、声も伸びてこないし、正直あんまりいいと思えなかった。しかしこちらはほとんど彼女自身がアルペジオで爪弾くアコギと、簡潔にして酩酊感のあるストリングスのみで構成され、ほとんどブリテッシュ・フォークのフォーマットで、彼女の資質が完全に生かされているように思えました。ブリティッシュ・フォーク調とはいえ、深く暗い森の中に分け入っていく…というよりは、歌詞カード裏の写真のような、時折明るい日差しの差し込む、木のまばらな森を散策しているかのようです。歌唱には力みも迷いも感じられず、前述した動画を初めて観たときのような、異様とも思えるほどの迷いの無さがひたすらに胸をうちます。痛々しいほどに真っ直ぐではあるんですが、脆さは感じない。時代性がどうこうなどこの作品の前では全く無力。そして、アルバムタイトル「灰色とわたし」(ほんとに秀逸なタイトルだと思います)、さらに歌詞に繰り返される「消える」「枯れる」という言葉から滲み出ているように、朗らかなくつろいだ雰囲気が、彼女自身の喪失感(と、喪失への恐れ)を自然な形で引き出している。そういった両義性が何度も繰り返し聴いてしまう、奥深い作品を作り上げているように思いました。
最近のコメント