故・中村とうよう(合掌)による丁寧な解説が素晴らしい、ジャズの展開をニューオーリンズ→スウィング→バップ…というよくある流れではなく、外縁の音楽からの影響も含めて追っているのが興味深いコンピレーション。解説の中に「ルーツとはその展開の中にある」とありましたが、それがとてもよくわかる企画盤。
こういう音楽を高校生の頃聴いてもサッパリわからなかっただろうなあ、としみじみと思ってしまいました。でも今は良さがわかる、と言い切れます。本質がわかる、なんて言えませんし言葉にすることも難しいんですけど。
ジャズの歴史は芸能(保守)と前衛(革新)の歴史であるとも言えると思うのですが、ここに収められた音源の前半は、自らが「芸能」であることに特に疑問を持つこともなく、愛想良く振る舞っています。にもかかわらずくぐもった音の向こうからでも伝わるこの躍動感!
私たちが何かのルーツを辿っていくとき、まるで最終的に何か全てに共通する岩盤のようなものがあるかのような確信を抱いていたりするのですが(本作品を聴くまでの私がまさしくそうだった)、実際にはそれは幻想であり、はぎ取っていったもの中に本質がある、ということのほうが多いのかもしれません。そしてそれはまだかろうじて歴史的な文脈を意識していた90年代に10代を過ごした我々が陥りやすそうな幻想である気がします。
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