「ばがすぃまぬうた」と読みます。大島氏は八重山諸島各地に眠る(多くは悲しい)民謡を、一つ一つ丹念に掘り起こし、浄め、自らが奏でる三絃(との表記)のみで一つ一つ大空へと解き放っていきます。一曲目「とぅばらーま」最初のヴァースを無伴奏で歌うところ…一聴、信じ難いほど張りつめた情感で一気に引きこまれました。しかしこのアルバム全体から私が受けた印象は決してそういった緊張でも、その逆の弛緩でもなく…ただただ「自由さ」に尽きます。大島氏の声は古典やら新作やらといった世俗/便宜的な境界(真っ当な社会的生活を営まざるを得ない我々が気を許すとつい作ってしまっている類いのもの)を軽々と飛び越え、いつの時代にも希求される自由な地平へと踏み出そうとしている。自由に飛び回る声に向かって三絃は地上から合図を送り、安定させ、正しい軌道へと絶えず修正している。八重山諸島に行ったことのある人ならよりいっそう心に深く刺さってくるはずです。
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