バンドでギターやってたことある人なら一度は耳にしたことのあるはずのギブソン社レス・ポールモデルの生みの親、レス・ポールおじいさんの名曲名演集…というとハード・ロックみたいなのを想像する人も多いかと思われますが、やってる音楽は実に人懐っこく、ポップ。しかし彼の恐ろしいところは、その大衆性を蔑ろにすることなく、尽きることのない実験を日夜繰り返していたというところにあります。しかもそれが「ビートルズ」みたいに、ライブ活動をすっかり投げ打って眉間に皺を寄せて没頭していたというわけではなく、「こうしたらもっとみんな面白がってくれるかな?」というサービス精神と、猫がおもちゃとじゃれているような無邪気さ(テクノでいうところのマックス・ツンドラ的)から行われているところに、私は深く感じ入ってしまうものがあります。別に「ビートルズ」が駄目だといっているわけではなく、レス・ポールは凄く「大人」だなあ、と思ってしまうのです(そんなこと言ったら『レディオヘッド』なんてただの赤ん坊ですけどね)。しかもその結果もたらされた彼の音楽が、凡百のいわゆる「先進的な」音楽より断然近未来を感じさせるものになっています。我々の科学技術がどれだけ進歩していこうとも、そのちょっと先を照らすような「近未来」性。それはつまり彼の音楽が「どこの時代にも属していない」浮遊感を獲得している、ということでもあるわけですが(彼の音楽から感じる非日常的リゾート感は、きっとそこからきているに違いありません。ちょっとハワイアンぽいところもあります)。書き忘れましたが、テクニックも勿論物凄い(それだって、芸の一つだから、というちょっとしたサービスで行っているところがまたニクい)。私は彼の音楽についてはこれぐらいしか語れないんですが、2008年に彼の伝記映画が作られてまして(ポール・マッカートニーからロン・ウッドからリチャード・カーペンターから要人がずらり。ポールは『ビートルズがライブで初めて演奏した曲はレス・ポールのハウ・ハイ・ザ・ムーンだ』と発言)、そちらをご覧いただければ一発かと。
ちなみにレス・ポールは昨年亡くなったそうですが、94歳で亡くなる直前までニューヨークでライブを行っていたそうです。きっとそのときもニコニコと超絶技巧を繰り出していたことでしょう。
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