ザ・バンドやジャニス・ジョプリンを手がけた有能なプロデューサーであるジョン・サイモンをシンガーソングライターと呼んでいいのかわかりませんが、ジョン・サイモンのこのアルバムを聴きながら、いわゆる「シンガーソングライター」のアルバムを聴くのはそういえば久々なんだな、と思いました。シンガーソングライターの音楽は大好きなんですけど。私にとってシンガーソングライターのアルバムって、バンドの音楽とは明確な違いがあります。例えばバンドの「コンセプト・アルバム」はサーカスとかオペラのような、わくわくする感じ(「サージェント・ペッパーズ」とか「トミー」とか「アーサーならびに…」とかの影響か?)なのに対し、シンガーソングライターの「コンセプト・アルバム」は私小説や他人のblogを読むという「分け入っていく」はらはらする感じをともないます。バンドを一つの宇宙に例えることは古今東西数多くなされてきたけど、そんなこと言っちゃえば一人の人間だって一つの宇宙であるはずで、宇宙を自らの内に求めるか外に求めるか?という違いなのかな、と考えているんですけど。
例えばこのアルバムはバックをザ・バンドがやってる(クレジットされてるのはガース・ハドソンならびにリック・ダンコ、リチャード・マニュエルだけなんだけど、ロビー・ロバートソンぽいギターも聴こえてきます)上に、スワンプロック&ウッドストック系大集合みたいな感じなんだけど、それでもこれでもかとてんこ盛りにならずにじっくり向き合って聴くことができるのは、このジョン・サイモンという男の中から自然と紡ぎ出された何のポーズも目配せもない音楽であるからだ、と言えるのではないでしょうか。ヴァン・ダイク・パークスと近しいものも感じました。
[追記] …というふうに考えてみると「ペット・サウンズ」って「バンド名義のシンガーソングライターアルバム」みたいなもんだから、やっぱり異端だ。
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