「黒いローラ・ニーロ」(←私が言ってるだけ)ニーナ・シモンです。これ、表面的には全く「ジャズではない」です。わかりやすく4ビートでスウィングするわけでもないし、ニーナ・シモンの歌唱もむしろサザンソウルとの近似を思い浮かべてしまうようなものです。それでも―いきなりさっき書いたことと矛盾してしまうんですが―アルバムを一枚聴き終わったときに、我々の中にこれは疑いようもなく「ジャズを聴いた」と思わせる何かがどっしりと居座ります。これは一体どういうわけか?
往々にして女性が情念をふりかざす表現はヒス気味になって、個人的にはちょっとそれだけでは耐えられないものがあるときがあるんですが(個人的にローラ・ニーロでさえもファルセットが連続する場面は聴いててちょっと辛いものがあります)、一つ言えるのは彼女のクラシック音楽の素養を含んだピアノの演奏と、太い発声の絡みの濃淡は、そういった満腹感からは程遠いということです。
それにしても…「私はいったい誰なんだろう?」とか「人と人とのふれあいが大切だ」とか、言い方は悪いけれども(たとえ他人の作品だとしても)誰でも思いつきそうなことしか歌ってないにも関わらず、その紋切り型の言葉の数々があまりにもひねくれた私の胸に真っ直ぐに届いてくるのは一体なぜなんでしょう?音楽の構造ってほんと不思議であると時々思います。
ローラ・ニーロにはソウルだとかポップス寄りの大衆的な要素?ってのがあるような気がして(初期のを聴くとキャロル・キングを連想したりします)、ニーナ・シモンはもっとスタンダードなもの、大袈裟に言ってしまうと、「音楽」って気がします。ほんとう、真っ直ぐに届きますね。深いところに届いてくる空気感と声。大好きです。
偶然にもちょっと前にyouTUBEで映像見ましたが、むせび泣きしましたよ。本当に素晴らしい映像なので時間がある時にでも是非。
http://www.youtube.com/watch?v=2M-zRMqCX7w
投稿情報: nishi | 2006/11/13 23:01