この高度に発展した消費社会の中では、誰にでも一つぐらいは相性が悪い商品が存在するはずである…という意見には賛同していただけるのではないかと思うんだけど、私の場合それが一体何であるのか?ということがこの数年間のうちにずるずるずる…と明るみに引きずり出され衆目に晒されることとなりました。それはあの「突っ張り棒」なんですが、「突っ張り棒」って…わかりますよね?壁と壁とか、押入れの中みたいな適当な距離がある空間に棒を突っ張って洋服をかけたりカーテンを吊るしたり…というあれです。しかし「突っ張り棒」を言葉で説明するのは結構骨が折れますね。
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例えば新しいアパートに引っ越したとするでしょう…それで、荷物もあらかた解き終わって、本もCDも洋服も食器も然るべきところに収め、ダンボールも潰して古紙回収で出し終わったときに人が考えることは何かというと、「そうだ、このへんに『突っ張り棒』が一本あると便利だな…」ということなわけです。これはまず間違いなくそうなんです。
それで、私の場合だったらホームセンターなり東急ハンズなりで「突っ張り棒」を買ってきて、然るべきところに説明書通りに設置するわけです。なーんにも変わったことしてないし、耐荷重量もばっちり守ってます。壁の材質だって問題無い。それでも外出先から帰ってくるとちゃーんと「突っ張り棒」は数十枚の洋服と共に床に落ちていて、私はクリーニング屋がくれたハンガーやらイトーヨーカドーのネクタイやらダッフルコートやら…が渾然一体となり、工事現場のように床に散乱している状況を目撃してしまうわけです。誇張じゃなく「ハッ」てしてしまいますね。そして私はこれが初めてではないことに、静かに思い当たるわけです。
その後の一瞬の暫定的な静寂の後に、私の嗚咽が夕闇迫る杉並の街に響き渡り、私の両頬を大粒の涙がつたい、その涙はイトーヨーカドーの紺と黄色のレジメンタル柄のネクタイの上にぼたぼたと零れ落ち、染みは夕闇に包まれる東京の街と同調するかの如く次第にネクタイの全体へと広がっていきました。
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「突っ張り棒」の問題点についてちょっと考察してみたいと思うんですけど、まず私が一番問題にしたいのは、それは設置の難しさにあると思うんです。前述したように「突っ張り棒」というのはカーテンを吊るしたりハンガーをかけたりするために使用するわけです。だから相当高い位置での使用が前提とされていると思うんです。地上30cmの位置で「突っ張り棒」を使う人はいませんよね?だからまあ「突っ張り棒」は少なくとも自分の身長よりは高い位置での使用が想定されてるはずなんです。たとえ脚立を使ったとしてもせいぜい目の位置よりは高いでしょう。その位置で「突っ張り棒」を固定しながら設置しなくてはならない…というのは想像以上に腕に負担がかかる作業であるということは、「突っ張り棒」に触れたことがない人も頷いていただけるのではないかと思います。しかも経験上「突っ張り棒」は両端に向かって圧迫して設置する方式が多いようです。そのためには「突っ張り棒」の一部をぐるぐると捻りながら圧力を加えていく必要があるので、どうしても「突っ張り棒」を片手で支える必要が出てくるわけです。これは人間工学的(←大きく出たなあ)に見てどう考えても困難な体勢であると断言できます。思い返してみると私が「突っ張り棒」を何の労力もはらわず設置することが出来たことは皆無である気がします。
そのように「突っ張り棒」は私を内から外から衝き動かす、もはやひとつの概念と相成りました。勘のいい人は気づいてくれたのではないかと思いますが、今こういったことを書いている私の横にも、先日落っこちてきた風呂場のシャワーカーテンと「突っ張り棒」が置いてあります。どうか、どうか世界の「突っ張り棒」よ、今夜壁に在りますように。
固定を確実にしようとめいいっぱい回したら
壁が歪んだ、という経験もあり。
投稿情報: MASATO | 2006/10/25 23:26
大半のご意見には賛成。まったくその通りだと思います。
でもさ、耐荷重守ってもなおずり落ちちゃうのは
水平に保たれてないからじゃないですかね?
水平に保つのは確かに困難ですが、一人で無理なら、
誰かの力を借りて設置してみては?
投稿情報: 主宰 | 2006/10/26 01:55
ぶきようなんですなぁw
投稿情報: テラケン | 2006/10/26 10:40