まず69曲ものラブソングをある一定の期間(短期間なのか長期間なのかはもはや問題じゃない気がする)に作ってしまうという精神の強靭さに私なんかはすっかり感服してしまうのですが。
マグネティック・フィールズというニューヨークのバンドが99年に出した、オリジナルアルバムの体裁をとりながら、純粋な(ときにねじれた性格をあからさまに露呈するが)ラブソングを、23曲入りCD×3枚に詰め込んだ超大作であり大問題作である。中心人物はステフェン・メリットって人で…この人の才能はひょっとしたらあのベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックを遥かに上回ってしまうのかもしれない。そして神をも恐れぬ物言いをさせてもらえるのなら、この「目の前で今まさに生まれつつある」メロディに対する執着に対しては、あのザ・ビートルズをも引き合いに出さなくてはならないのかもしれない。アレンジはエレ・ポップ風だったりカントリー風だったりえせスペクター風だったりとバラエティ豊かである…しかしメロディなんだ全ては。曲想自体は例えばダニエル・ジョンストンを彷彿とさせる「自家発電」的なものを感じるんだけど、概観するとインディ臭とは無縁のスケールのでかい音楽である。
このステフェン・メリットは後に"i"という全ての曲のタイトルが"I"で始まるアルバムを出すんだけど、このような「リミットを設定し、それに挑む」という姿勢も高く評価出来るだろう。
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