私が好きになる音楽は、しばしば私の内奥で似たような印象を想起させることがある。それは「何かが降りそそぐような音楽」と「何かが込み上げてくるような音楽」という、二つの対照的な印象である。前者は空の彼方から漏れくる光のような音楽であり、それはもはや宗教的ともいえる経験である。後者は私を巻き込みながら天まで一緒に連れてってくれるような音楽だ。
このアルバムは私の中では前者の代表作ともいえるものである。一つ一つの曲の繋ぎかた、それからコードチェンジ一つ一つに細心の注意がはらわれている、と同時に、これ以上無く豪快で大胆だ。
そしてこのアルバムを支配するこの何千何万という声の木霊は何なんだろう?それらはマーヴィン・ゲイ自身の自問自答である、と同時にそれらは私自身の自問自答ともシンクロしていくのである。
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