このアルバムは実は私の卒論テーマと微妙にかぶってて、ちょっと書きづらいんです。そのうえジャズ史に燦然と輝く名盤と言われてる割には意外とアゲンストなレビューが多いのですが、なんのなんの実に美しいアルバムだと思いますよ私は。少なくともちっとも退屈ではないです。燻るバッパーたち(スウィングの臨界点をみたジェリー・マリガンとギル・エヴァンス、バップの体力勝負に限界を感じていたマイルス)によるスウィングの再構築プロジェクト、という位置づけでいいと思うのですが、バップの名曲の数々がスウィングの文脈においても立派に通用することを、彼らはビターンと叩きつけたのであります。異能の黒人たちの手による、静かに熱く燃えたぎる、上質なサロン・ミュージック。濃ゆいレンズのサングラスをかけてはいるが、マイルスの視線は全ての演者を絡めとっている。
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