カフェカブが終わってからというものよりいっそうカブについて考えることが多くなってしまいました。何も手につきません。困ったものです。よく考えてみるとリトルカブってバイクを知ったのが1999年ぐらいなんだから、そろそろカブっていう乗り物に飽きてもよさそうなものなんですけどね。やっぱり「知ってる」ことと、「実際に日々酷使している」ことの間には相当に大きな隔たりがあります。
カフェカブにおいて私が考えていたのは、やっぱり私はカブを切り刻む方向も、また無条件にスーパーカブを賛美し受け入れてしまうのも苦手であるなあということです。大体私はあの本田宗一郎というかた自体ちょっと受け付けないところがあるw そういった矛盾が私とカブの間の微妙な距離を生んでいて面白いと思うんですが…。無論カブというのは最も度量の広いバイクの一つだと私は考えているので、切り刻もうが過剰な思い入れを抱こうがそれに耐えるだけの(物理的ではない)耐久性は有していると思うし、そういった先人たちの果て無き努力がカブ産業を盛り上げてきたのは紛れも無い事実であるし、端的に言えば誰が何をしようと勝手、ということなんですが、私はそのどちらでもない地点にカブの可能性を感じているところがあります。といっても中途半端にカスタムしていこうとか、間隙を突いていくという意味ではありません…それは単に方向性を見失ってるというのではないでしょうか?純粋に態度の問題です。
そこで私に多大なるヒントを与えてくれたのは↑のカブです。このカブを見たときになんらかの天啓w を受けた人は私だけではないと思っているんですが(某上司とか…)。カブを切り刻んでる人々が限りない自由を享受しているように見えて、その実次第に袋小路に追い込まれてるように見えるのに対し、このカブの素晴らしいところはカブ本来の力強さと機能美がビタイチ失われていないにも関わらず、澱む空気を切り開いてくだけの清新さを宿していたところにあります。換言すればそれは一段階進んだスタートラインなのではなかったかと私は思っております。ルネッサンス的であり、新古典主義的でもあると言えると思いますが。それまでの歴史をチャラにして「原点回帰」するのではなく、それを体系化・血肉化し、再構築することによって「再び始める」ということ…。それはR&Bの世界でディアンジェロとかマックスウェルとかエリカ・バドゥがやろうとしていたことと酷似しています。
考えてみると私はこの「再び始める」という主題に異常に執着してきた経緯があります。例えばコリン・ブランストーンの「一年間」、ブライアン・ウィルソンの「ブライアン・ウィルソン」、小沢健二の「犬は吠えるがキャラバンは進む」などのレコードを20代前半の私が取り憑かれたように聴いていたのは、つまりは他人が「再び始め」ているのを擬似的に体験することによって、自分の中に取り込みたかったからに他なりません。イメトレみたいなもんです。20代前半を私はほとんどそのテーゼだけで乗り切った、と言っても過言ではありません。
そしてこの三枚から私が学んだことは何か?…そう、「再出発というものは必ず一人で行われなければならない」ということなのです。
結局デザイナーや開発者の思想が一番色濃くでていたのが初代カブだと思うよね。その後とても多くのユーザーの意見や日常使われていく経緯の中でブラッシュアップされていく機能に重点が置かれ、「毎日目にするもの」というスタンスが薄ぐ日本人の国民性によって、雑種的な力強さが前面に押し出されてるデザインに成り下がってしまったというか。いじることでその個性を回復するのもありだろうけど、ユーザーの多さもあって改造手法も定番化してしまい、ポン付けパーツも量産され、むしろ手詰まりみたいな。で私はvanvan90へシフトすると・・・w。
投稿情報: 天啓のオレンジ | 2006/11/27 12:07
そうですね、あの黒カブはある意味強引にど真ん中から知性の力で突破してきたんだと思います。そこらへんが清々しさの源になっているんだと思いますが…。
カブが「毎日目にするもの」だからといって、「人と違うことをしないと」って考えてしまう人がどんどん脱落していくんだと思います。我慢が出来ない、というか。何にせよ持ち味というのは一種の我慢からしかにじみ出てこないのではないかと私は考えてます。
オレンジ上司はカブはライフワークにしてくださいw 我々が困ってしまうので・・・。Vanvanもいいですが。
投稿情報: yoji@川口満喫中 | 2006/11/27 16:23
目新しさを追い求めてあらぬ方向へ進んでしまって結果的に多くに受け入れられないようなファッションとか、結局解雇主義的手法をつかわざるをえないファッション、みたいなカブには興味ないのですが、あのc105は素敵でした。あんなことされると困ります。しかしかっこいいってこととかっこつけることとの違いを目の当たりにさせられた気分になりますよ。われわれもあああるべきですな。でもカブをライフワークにはできないかと・・・w。今のところ心を占領しているのは下部いやカブですがw。
投稿情報: 天啓のオレンジ | 2006/11/27 21:35