先日、ひょんなきっかけで知った早稲田大学の小野記念講堂(綺麗な建物です)で行われた菊地成孔氏の講演「21世紀のジャズ」を聴講してきました。入場無料です。私は講演が始まるまで全く知らなかったんですが、これは小沼純一先生との対談だったんですね。実は私はこの先生の講義(←むちゃくちゃ面白い)を一年間受講したことがあり、著作も数冊ほど読んでおります。菊地氏のウェブサイトを見ると小沼先生と菊地氏は親交があるそうなので、おそらく小沼先生が呼んだのだと思いますが。菊地氏が新宿・歌舞伎町在住ということは有名ですが、「早稲田は近いですね。ふらっと来ちゃった」みたいなことをおっしゃっておりました。
それにしても私も四半世紀ほど生きてきて、様々な人の話を聞いてきたと思いますが、菊地氏ぐらい面白い話する人ってちょっと思い浮かばないですね。興味深いというより、自分はなんて物知らずなのかと気づかされるというか、知識欲が絶えず刺戟され続けるというか…。私は貧乏性なもので最初から最後までメモを取りながら集中して拝聴いたしました。「21世紀のジャズ」と銘打たれてるので、私は21世紀に入ってからの世界のジャズシーンを菊地氏がどう見ているのかとか、ジャズ製作の現場はどう変化したのかといった実践的な話が聞けるのではないかと期待していたんですが、実際は俯瞰的、また理論的な話に終始したのであれれれと思うこともありました。一部「東京大学のアルバート・アイラー」と重複するところもありました。でもなんせ無料なんで文句は言えません。話は大きく「ポリ」というキーワードを巡るものになりました。
[以下自分用メモ]
・「21世紀のジャズ」を考える上での「ポリ」の重要性(ポリリズム、ポリトーナリティ≒モーダリティ、ポリジャンル、またそれらを統合するメタ・レベルでの『ポリ』)
・アメリカ大陸において振り落とされたアフリカ音楽の持つイーオン時間の復権
・濱瀬先生の「ブルーノートと調性」、下方倍音列の設定→フィリップ・ラモーから続く「調性」の結句感は全て無効
・フロイト的にみると上方倍音列=意識・社会性(有限)、下方倍音列=無意識・夢(無限に近い)
・ロックがブルース・マイナー・ペンタトニックをお菓子のようにバクバク消費したのに対し、70年代マイルスに代表されるジャズはベースラインでブルース・マイナー・ペンタトニックを鳴らして、上ものを無調で鳴らす→顕在化されている情報の裏に秘密が隠されている
・エキゾチズム、エクスタシー、オリエンタリズム、ポスト・コロニアリズム
エイゼンシュタインが音楽と映画を完全に統一させる理論を研究していたという話(『映画と音楽における第三言語』という論文があるそうです)、「『構造と力』はファンクだと思った」という話、スライは「スタンド!」を聴衆が座ってる前で演奏していたという話…も非常に面白かったです。私はぶっちゃけ菊地氏の作品はソロ名義のものしか聴いたことなかったんですが、ティポグラフィカとかデートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンも聴いてみようと思いました。
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